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門井慶喜「東京帝大 叡古(えーこ)教授」のユーモラスさの巻

 門井さんの最新の本だ。装丁は「若桜鉄道うぐいす駅」と似た感じだ。
○ ストーリー
表紙カバーの絵が何やらレトロだと思っていたら、第一高等学校とか第五高等学校が出てくるから、戦前の、しかも明治時代のお話だとわかる。
表題も「東京帝大」だからねえ、当然か、笑い。
熊本の第五高等学校の学生が上京する場面から始まる。本名は少し後でわかる仕組みになっている。とりあえず「阿蘇藤太」である。彼の一人称での見聞と語りで展開していく。
 彼は、叡古教授と東大構内の図書館で会う約束となっている。ところが、最初に出会った人物がいきなり倒れ込んで、・・・・・。つまり殺人事件にいきなり遭遇というわけだ。そして、彼の窮地を救ったのが、当の本人の教授であったということだ。
 さらに第二、第三の殺人も起こり、犯人捜しの興味と、背景の究明=謎解きがない交ぜになっている。
 のんびりした時代背景と、ユーモラスなテイスト満載のミステリだ。
 門井さんの各本に共通するユーモア・センスはここでも基調となっているのだ。
 ちなみに、阿蘇藤太は教授のつけた仮の名前である。そこにもある秘密が・・・・、笑い。阿蘇は、予科の独法科で学んでおり、進学先は東京帝大と考えている。
  構成は第一話から六話、最終話の七話形式。第一話で、阿蘇がコナン・ドイルのシャーロック・ホームズに触れ、明治期の洋物のにおいを振りまいている。楽しめる読み物として期待を抱かせる。
 語りは、阿蘇の一人称だ。第一話では、彼は、教授に言われて「国民新聞」の社会部探訪記者松崎天民とともに聞き込みをする。でもシャーロックというより、ワトソン役かな。何故なら、教授が主役で明晰な推理をするからだ。一話は、あっけなく謎が解明される。
 そして、戸水寛人教授(要するに日本史で習った東大七博士の一人)や徳富蘇峰が実名で登場する。この辺は門井さんの特徴でもある。巧みに虚実を織り交ぜる。
 さらに、二話以降はもっとスケールの大きな出来事へと発展していくのだ。教授の娘の「さくら子」も登場し、華やかさを盛り込むことも忘れていないのがうれしい。また、さらりと門井さんの出身校の同志社英学校のことが出てきたりして、明治の近代化のプロセスも楽しめるのだ。もちろん、明治期の最大のオピニオン・リーダーである福沢諭吉の話題や言葉もふんだんにある。そして夏目金之助(漱石)、西園寺公望や彼の設立した私塾・立命館、政治家の原敬、桂太郎まで出てくる。それを読みながらほくそ笑むだけでも楽しいのだ、笑い。
 ネタバレになるけれど、さらにファクシミリの存在や二進法によるコンピュータの示唆まであるからサーヴィス満点だ。ラスト数ページで、藤太の正体も犯人も判明する。「なるほど、そうだったのか!」と読み終わってある種の感銘が残る。
 * 後日新聞を見て、この作品が直木賞の候補にあがっているのを知った。門井さんの力作だ。
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サマンサどら猫

Author:サマンサどら猫
 FC2ブログへようこそ!ミステリ大好き人間ですw-。そして、冬以外はアウトドア系(山登り、ハイキング、ウオーキング、サイクリング、釣り)、日帰り温泉、旅行などの趣味を楽しんでいます。茶トラを飼っていて、名前がサマンサです。卓球やバドミントンも好きで、最近は弓道も始めました。

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