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ダニエル・シュルマン「アメリカの真の支配者 コーク一族」

 これはアメリカの代表的な企業を扱っているけれど、企業小説には分類しにくいし、かといって伝記と分類するのも単純すぎると思う。創業者のフレッドだけを取り出せば、彼の一代記=伝記だともいえるのである。
 父フレッド、母メアリー、息子のチャールズ、フレデリック、ディヴィッド、ビルを含めて考えると「コーク一族」(コークと言ってもコカ・コーラを連想するのは間違い!石油・化学・肉牛を扱う巨大資本である)の大企業家一族の物語として読むことも可能なのだ。
 本を読んだのは、アメリカの最近の政治史の中で特異な?位置をしめる、ティー・パーティー運動リバ-タリアニズムリバタリアンに興味をもっていたからである。これらを理解する格好の本であったからだ。
 その意味で、まさに適切な本であったと思う。
 しばしば右派の積極的な運動として、或いはオバマ政権への批判的な運動として共和党の保守派ともつながるのがこれらの実態であり、ロビー活動をそのコーク一族の豊富な資金で展開するものであるからだ。
 リバータリアニズムという語感から、リベラル、リバティー、リベラリストという単語を連想しがちではあるが、「自由」を信奉するのだが、徹底して個人の自由、そして政府からの自由を主張するのが独特であるのだ。なので、累進課税による社会福祉を前提とする「大きな政府」を排除し、「小さな政府」を主張とする。時には、個人の自由の為には政府なんかいらないとする無政府主義とも連携するのである。その意味で、政治的には右派であり、タカ派でもあるいえる。
 フレッドは家業を受け継いで大きくし、「ジョン・バーチ協会」を創り、そのメンバーにはダグラス・マッカーサー(日本の占領政策で有名)も含まれている。チャールズは父以上の企業集団をつくり、サンフランシスコにリバータリアニズム運動の中心を置き、ケインズ経済学の批判者である、経済学者のミルトン・フリードマン、「大草原の小さな家」の作者ローラ・インガルス・ワイルダーを講師に招いて草の根の運動を展開していくのだ。それがティー・パーティーへと繋がっていく。
 その意味で、公民権運動に反対したり、反共を核とした影響力を与え続けているということがよくわかるのである。
 その意味で刺激的な本でもある。
  
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田中啓文「鍋奉行犯科帳 お奉行様のフカ退治」

 これは抱腹絶倒の講談的時代物だ。
 田中さんといえば、ジャズ・ミステリの傑作も何冊か有り、落語ミステリの笑酔亭梅寿謎解噺のシリーズ(愛川晶さんの落語ミステリと双璧)、そしてジャズに懸命に取り組む少女の成長物語である「ストーミーガール」がある。
 マイ・ブログでも引っ越し前、引っ越し後に紹介してきましたが、新たな読み物として紹介することになります。
 集英社は、『食い倒れ時代小説』というネーミングを使っています。適切かどうかわからないが、主人公は鍋奉行こと大坂西町奉行大邉久右衛門が粋な裁きをするシリーズものとでもいえばよいのか。
 彼はとてつもない大食らいで、健啖家。美味いものには目がない。そしてトドのように太った巨漢である。
 今回はシリーズの6冊目。
 『第一話 ニシンを磨け』『第二話 お奉行様のフカ退治』『第三話 苦い味わい』の3話が収められている。
 第一話では、ニシンのコンブ巻きを最初にさりげなく登場させ、乾物の仲間の内紛と、剣術か同士の闘争を絡めながら、お奉行様が見事に捌くという体裁になっている。
 大坂落語にも出てくる異色の食(めし)の旦那こと佐太郎をうまく配置し、人情話風に仕立てている。食の旦那が説く商売の秘訣が面白い。ここらへんが田中さんの描写の核心だ。
 第二話では、フカ(サメの大きいやつ)がよりにもよって、奉行所の水練稽古の場に出現。「ジョーズ」ばりに大口を開けて久右衛門らを襲うのだ。お奉行はフカの処理に人情話独特の裁きを見せる。それだけでなく、若い三味線の師匠と彼女にかかわる男たちも登場させてスパイスをきかせている。
 第三話は、釣り談義にページを割いている。そしてナマズ、化け物神社、偽札、キュウリ、河童などなど判じ物のようであるが、これらをうまく組み合わせて面白い噺に紡いでいるのだ。
 講談師の旭堂南海が解説で、講釈(講談)ネタが満載であることを書かれているのでそれも興味深いのだ。
 6巻から先に読んだので、前の5巻をまた読んで感想を書いてみますのでよろしく。

浜矩子「EU消滅」のインパクトの巻

  これは刺激的な本だ。副題は、『ドイツが世界を滅ぼすか?』だ。大体この人はきっぱり、ズケズケものを言うタイプに属する。なので、文章も歯切れがよくて小気味よいのである。
 この本は、特に戦後のヨーロッパの歴史を土台に置いてしっかり分析しているから説得力がある。
 欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)からはじまって、EEC、EC、マーストリヒト条約を経て「EU」の結成、そして「ユーロ」という単一通貨の導入を実にスリリングに描いているといってもよい。
 その際、独・仏の関係、英・仏の関係を中心におきつつ、政治面と経済面での協力関係をはめ込んでいる。読んでいてついニヤリとさせられるのは、ビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」をもじって「マジカル・ヒストリー・ツアー」と表現したりのユーモアもあるのだ。
 そして、政治家として、チャーチルから始まって独のアデナウアーと仏のド・ゴール、そしてメルケルへの橋渡しを丁寧に説明する。
 特に題名にかかわって、EUの未来については、幾つかの欠点(ギリシャ問題、実利的なイギリスの行動、旧東欧諸国の動き、難民問題など)を指摘しつつ、メルケルの内心?にまで踏み込んで、エールを送っているようにも思われるが、いかがなものであろう?

佐伯泰英「居眠り磐音江戸双紙48 白鶴ノ紅」

 あれから時は過ぎ、辰平とお杏、利次郎と霧子の祝言で、辰平は福岡藩の江戸藩邸に、利次郎は関前藩江戸藩邸に引っ越した。小梅村は寂しくなったが、それぞれの旅立ちでもある。
 奈緒は山形藩の行列に従い、江戸入りして磐音と再会。おこんとも会う。さらに紅染めの修行をした後、江戸で最上紅前田屋を浅草寺門前町で華やかに店開きする。
 武左衛門の娘秋世は奈緒の店で方向、磐音の息子空也も成長。時代を担う子どもたちの成長ぶりも微笑ましく描かれている。
 一方、田沼意次は凋落の一途、十代将軍家治の容体がおもわしくなく、身罷かってしまう。政治の流れは一気に反田沼の様相を見せ始めるのだ。いわゆる田沼派の幕閣も掌を返したようになる。しかし、老獪な田沼の最後のあがきは磐音にも影響せざるをえない。雇われ剣客たちとの闘いも幾つか描かれる。
 そして松平定信たちは田沼の追い落としをはかり、活発化する。いわゆる政争である。
 磐音はまた関前藩主の命を受けて、お内儀お代をむかえるべく磐音らは鎌倉へと向かう。
 小梅村を中心とした人間模様は多彩で、温かい。これがこのシリーズの特徴でもある。
 完結まであと少しだ。

佐伯泰英「居眠り磐音江戸双紙 47 失意の方」

 いよいよ慣れ親しんできたこのシリーズも完結間近いのです。51巻でめでたく?完結するので、話題になっておりますw-。先日の朝日新聞では、1ページを割いて「磐音新聞」なるものを特集しておりましたよ。
 すなわち、磐音を取り巻く人々、時代背景=最大の敵の田沼意次とその政治的位置づけなどを興味深く書いていました。
 前回は、弥助が江戸城の床下で我が子とも思う藪之助をやむなく殺害。→田沼の息子意知の刃傷事件があり・・・・。なので、「失意の方」というのは誰のことかわかりますよね。
 今回は、藪之助の供養のために弥助が遺髪をもって密かに伊賀者の故郷に旅立つ場面から始まるのだ。さらに、難儀している奈緒の救済のために山形へと弥助は向かう。
 磐音は、小梅村に居て、佐々木家の隠し墓参りをし、その折りに浮世絵師北尾重政との関わり合いが出来、彼を道場に連れ帰るのだ。居候を決め込んだ重政にはラストである重要な役割がふられている。ここではネタバレはしないでおく。
 一方、剣客土子順桂が現れ、いつの日かの果たし合いを予告することに。
 霧子は師の弥助を助けるべく山形へ旅立つ。
 妖術使いの一団が小梅村の道場に道場破りとしてやってくる。この巻でいちばん面白いところでもあるのだ。首領の卜部と「ひな」の動きは奇妙で妖しいのだ。
 
プロフィール

サマンサどら猫

Author:サマンサどら猫
 FC2ブログへようこそ!ミステリ大好き人間ですw-。そして、冬以外はアウトドア系(山登り、ハイキング、ウオーキング、サイクリング、釣り)、日帰り温泉、旅行などの趣味を楽しんでいます。茶トラを飼っていて、名前がサマンサです。卓球やバドミントンも好きで、最近は弓道も始めました。

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