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藤田宜永「血の弔旗」はノワールの傑作だ、の巻

 ノワール(暗黒小説、犯罪小説)、広い意味での犯罪ミステリの傑作といっていい。藤田さんのノワールを中心としたミステリは、ハードボイルド・タッチで定評があったが、これはその中でも最高の傑作であろう。
 ストーリー: 1966年、東京で金融業者の現金が強奪され、一人の水商売の女性が銃殺される。
 犯人は、金融業を営む原島のお付き運転手の根津謙二が主犯、仲間の宮森菊夫、岩武弥太郎、川久保宏の4人だ。
 11億円がその夜に原島邸に運び込まれると知った根津の思い切った犯行計画であった。ただし、誤算があり、邸に偶然訪れたバーのマダムを射殺してしまった。
 現金強奪はうまくいき、根津は周到なプランのもとで警察の追求の網をかわそうとする。その犯人たちの生き様としぶとさはスリリングでさえある。まるで一昔前のフランス映画(アラン・ドロンやジャン・ギャバン、ジャンポール・ベルモンドらの映画)の匂いがするのだ。藤田さんはフランスに滞在経験があるのでそんなテイストもうなずけると思う。
 そして、時系列で彼らの行動と、周辺の人間の動きが描かれ、また戦中の疎開先での彼らの出合いも丁寧に描くことにより、小説としての広がりと深まりが出ている。この辺は藤田さんの渾身の力投が遺憾なく発揮されている。
 同時に、あの時代60年代後半から70年に至る作者自身の清秋時代を過ごした東京の詳細な生活体験がリアルに迫ってくる。
 そして、4人の人物描写はもとより、女性たち、すなわち謙二の関係するアングラ劇団の増美、恩師の娘である鏡子の描き方の巧みさ、原島や刑事石橋の造型も説得力があって面白く読めるのである。
 また、犯罪小説としても読めるし、作者の「青春グラフィティ」としても読めるのだ。
 題名の「弔旗」の意味は、後半を過ぎてから、なるほど、と理解できるのである。そしてラストでの謙二の運命と感慨に共感?できるのである。
 しかしながら、終わり方が少し性急であっさりしすぎかな?と私は思っている。つまり、ノワールとしてのふてぶてしさに欠けるのである。ギラギラした謙二にワルとしての魅力があるだけに残念である。
 もうひとつは、目に見えない脅迫者とその正体の描き方はありきたりのような気もするのだが、結論はこれしかないだろうな。こう書くと作者に対して失礼ではあるが。
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「デッド・オア・アライヴ」江戸川乱歩賞作家アンソロジー

 江戸川乱歩賞作家ったちの作品を集めたものである。
 それぞれに作風や工夫があり、やはり読んで面白いのだ。
薬丸岳『不惑』: これはサスペンス・タッチで、過去のある出来事と現在の同窓会と結婚披露宴をつなぐ動きがスピーディに描写されている。
 高校の同窓会の会場(ホテル)では不惑を迎えた人物たちが集っている。その隣では披露宴が華やかに催されている。
 元Jリーガーの窪田にとってはある不幸な過去の事件が陰を落としている。そのことで彼はある人物に殺意を抱いているのだ。その少年Aとは?さらに、同窓の友人たちがとった行動とは?
 特に刑事である夏目と窪田との会話の中に、人生の哀しみと苦しみがあって心を打つのだ。
竹吉優輔『イーストウッドに助けはこない』: 俺(甥っこ)と叔父の力弥の関係が軸になって話は進行する。子どもの頃の叔父と甥がイーストウッドの西部劇に馴染んでいた回想が下糸となっており、現在の力弥の拘束とヤクザの絡みが上糸を紡いでいる。
 表面は、どろどろしたヤクザの抗争を描きつつ、独自のユーモアと明るさが基調となっており、ラストでの爽快感につながっている。
横関大『クイズ&ドリーム』: 心中にある思惑を持った主人公が、謎の男にホテル内で拘束された。理由もわからない状況の中で、クイズ形式のやりとりで生死をかけた賭をするという設定だ。SFのテイストを練り込んだサスペンス・タッチのミステリだ。
遠藤武文『平和への祈り』: 懐かしい。昔流行ったケサランパサランを小道具として登場させながら、乱歩賞を過去に受賞した主人公の推理作家がホテルの贈賞式に出席をするという設定自体にユーモラスな味わいがある。
 そこに聖書のヨハネの黙示録の第7の封印の話をからませて奥行きを広げ、それと街角で彼が遭遇するある事件、さらにはある脱獄事件まで登場させ、力業でを無理矢理?くっつけながら?(この発想、ホラ話の類いは嫌いじゃない)展開していく。
鏑木連『終章~タイムオーバー~』: 題名にふさわしい緊迫感のある一編だ。最後まではらはらどきどきさせる展開は見事である。
 新興ベンチャー企業の社長日下凜子、婿養子の副社長琢郎、専務の山戸、社長秘書青柳摩耶。この4人のそれぞれの動きと言動が巧みに織り込まれ、凛子と琢郎に毒を盛った犯人捜しとサスペンスフルなストーリー展開に読み応えがある。

「不可能犯罪コレクション」二階堂黎人編

 新鋭作家6人による6作品が収められている。
大山誠一郎『佳也子の屋根に雪ふりつむ』: 幾つかの仕掛けのある、そして意外性のある一編。
 婚約者から引きはがされ世をはかなんだ笹野佳也子が自殺未遂から物語は始まる。三好達治の「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ」の詩ががよく効いている。
 親友秋穂と、佳也子が入院した病院の女医典子。そして目覚めると佳也子は典子の死体を発見。加害者との疑いをかけられる。
 雪の上の足跡も一人分しかない、つまり密室殺人だ。
 そして、密室蒐集家という謎の人物が登場し、この不可能犯罪を明快に解き明かしていく。
岸田るり子『父親はだれ?』: サスペンス色の強い作品。
 実験用マウスを使って研究にいそしむ七菜子。彼女が高校の同級生龍子の自殺事件をめぐり、元教員の夫や当時のクラスメイトを訪ね歩いて事件の真相にたどりつくが、最後のオチも効いている。
鏑木 蓮『花はこころ』: 能と能舞台が主たる異色の作品。
 能の仕組み、内容がきめ細かく描かれている。地謡の紙屋鞠子の目をとおして、能舞台での演者玄治の死をめぐる謎解きである。能の奥深さがせまってくるミステリの傑作である。
門前典之『天空からの死者』: 建築&探偵事務所の蜘蛛手と僕(宮村達也)、宮村の視点で事件の発生と謎解きで話は進む。
 蜘蛛手の設計したビルに隣接する水谷テントという小会社に二人が行くことになり、ビルからの飛び降り死にかかわることとなる。鍵のかかった屋上からの落下という一種の密室での犯罪だ。
石持浅海『ドロッピング・ゲーム』: 石持さんは作品も多く(私も何冊か持っている)、新鋭とはもはや言えないが。
 近未来の日本にアメリカからやって来て10年になる小学校の英語教師ヒル。
 この時代の日本では、12歳でふるいにかけられて子どもたちの未来と仕事が決定--つまり、競争と選別が徹底しているシステムが構築されている。
 それまで仲良しカルテットであった4人の間に進路決定という過酷な現実が挟まり、遂にヒルの目の前で翔一の飛び降り自殺が遂行されるのであった。治安警察の番匠大尉が調査するが、自殺の原因をヒル先生が解明する。しかし、その後の事実も書かれており、ブラックユーモアのテイストもあるのだ。さすがというべきだろう。
加賀美雅之『「首吊り判事」邸の奇妙な犯罪』: 探偵シャルル・ベルトランが見事な推理を披露する一編であり、古色蒼然たるイギリス風密室ミステリのテイストだ。 アプリコット・ブランデーをすすりながらのシャルルの話し相手がパトリック・スミス。この二人が、シャーウッドの森近くの、おどろおどろしい雰囲気を漂わせる「首吊り判事邸」に赴く。
 判事の後妻の美しいキャサリンが密室状態で他者の侵入の痕跡の無い礼拝堂で刺殺体となる。さらに気落ちした判事が、同じ密室の礼拝堂でベッドに横たわったまま刺殺体で発見される。シャルルは、壮大な仕掛けで殺人が行われたことを明快に解明する。イギリスの古典派ミステリの味わいもある。

北欧ミステリについて

 先日、「ザ・ブリッジ」のシーズン2をレンタルして、1回の書籍部でミステリの棚を探っていると、「ミレニアム」という文字が飛び込んできましたあー。うん?と思って手に取ると、「ミレニアム4 上下」でした。スティーグ・ラーソンが原稿を残して亡くなったという事は知っていたのですが、紹介記事を見ると、作者が残した原稿をふまえ、別の作者が書いたとありました。
 でも興味津々。北欧ミステリのファンとしてはたまりませんなあ。リスベットがどうなった?それが問題だ!→ただし、立ち読みするでもなく、買うわけでもなく(今、沢山の未読本が積んであるので、手が回らない)読みたい衝動を残して立ち去りました。
 北欧ミステリの傑作をどうリニューアルするのか?読みたいですねえ。
 いや先ず「特捜部Q 吊された少女」が読み終わっていない、「ザ・ブリッジ シーズン2」も観ないといけない、レックバリの「エリカ&パトリックの事件簿」の数冊も読まないといけないし・・・・困っていますw-。
 それ以外に、篠田節子さんの本、伊坂幸太郎さんの本も読まないといけないし、わが家のガラスの拭き掃除もしないといけないし。あ、これは関係ないか、でも奥様のおしかりが怖いですし、笑い。
 年末の冬ごもりの楽しみがいっぱいありますw-。

「特捜部Q 吊された少女」

 いよいよゲットしました。北欧ミステリの雄デンマークの特捜部Qシリーズの待ちに待った6冊目が出て、これを予約したところ先日ゲットする幸運が訪れました。
 もちろん、今回も特捜部のカール、アサド、ローセのお馴染み3人を軸にまた難事件が発生する。
 発端は、カールにボーンホルム島に長年勤続の警官ハーバーザードからの電話であった。しかし、真剣にカールが取り合わなかったため、ショッキングな出来事を引き起こしてしまうのだった。
 ここでハーバーザードが依頼したかった事件とは何か??それが今回の核心でもある。
 3人の性格と言動、お互いのやりとり、これらがますます面白くてこの警察ミステリを盛り上げている。世界的な人気もよくわかる。
 すなわち、仕事のストレスで苦しみ、不満だらけのカール。かれは独特の皮肉屋でもある。自信家で鋭く、あけすけなローせ。そして不可思議な側面を持つアサドの絶妙なコンビネーション。彼らの会話もストレートに楽しめるのだ。
 二人は体をはって犯人に向き合う→今回も大変な目にあう。ちょっとタフで不死身なところもあるのです。
 それにしても、カールが飛行機嫌いで、アサドがフェリーの揺れに弱いと初めて知ったよ、笑い。こんなささやかなところも楽しめるのだ。→ そして3人はボーンホルム島に向かうのである。いつもながら三人三様の調べ方も面白い。
 現地の警察官は、一人の少女が車の引き逃げにより木の上にはね飛ばされ、逆さ吊りとなった事件について話すのだった。そして、ハーバーザードはその第一発見者で、真相解明に執念を燃やしていたようだ。
 登場人物たちのうちで、怪しげな「人と自然の超越的統合センター」のカリスマ的指導者アトウ、彼の片腕の役割の女性ピルヨ、そしてアスリートのワンダの二人の女性同士の対立と対決?嫉妬、ある種のパッションが内容を読み応えのあるものにしている。
 アサドとカールが聞き込みを続けているうちに、天使のように愛らしい少女アルバーテが実は周囲の友人たちと様々なトラブルを抱えていたことも判明してくる。
 しかし、100ページを過ぎたところで(全体は617ページ)、犯人がわかってくるのは??早すぎないかとも思う。まあ全体の筋の運びの面白さをマイナスにすることはないにしても、ちょっと気になるのだ。実はここまで読み終えたところでこう書いたのですが、作者はどっこい一筋縄ではいかないストーリー展開を用意していたのですw-。欺されました。
 単純な筋道ではないのが北欧ミステリの特徴ですねえ。それをすっかり忘れておりました。
 ワンダとルームシェアをしていたシャーリーの存在感も大きいです。
 唯一不満なのは、犯人らしくない人物が元の犯人であったのですw-。ネタばらしはしませんが。
つまり意外性ということですね、これは。なので、犯人が複数存在し、行方不明の人物、複数の死体があるわけですよね。
 ファンへのサーヴィスとして、カールの盟友ハーディの行動も挟み込んで生き生きと活躍?させる。そしてかの事件の真相の一部も、宿敵の殺人課の上司ラースの記者会見という形で明らかにされる。もちろん、カールによるその場の巧みな利用?とその後のトラブルも描いていて、ますます面白いのだ。
プロフィール

サマンサどら猫

Author:サマンサどら猫
 FC2ブログへようこそ!ミステリ大好き人間ですw-。そして、冬以外はアウトドア系(山登り、ハイキング、ウオーキング、サイクリング、釣り)、日帰り温泉、旅行などの趣味を楽しんでいます。茶トラを飼っていて、名前がサマンサです。卓球やバドミントンも好きで、最近は弓道も始めました。

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